箱根にある”星の王子さまミュージアム”がこの3月で閉館になると聞いて、慌てて出かけてきた。
星の王子さまの物語を初めて読んだのは、たぶん中学生のとき。
その後ずいぶん経ってから英語版で数回読んだ。
あの挿絵のかわいらしさと本の中の王子様の無邪気さにも関わらず、端々に考えさせられる発言や出来事があり、読むたびに新しい発見がある、大好きな物語だ。
One sees clearly only with the heart. Anything essential is invisible to the eyes.
引用元:The little Prince written by Antoine de Saint-Exupéry
物事は心でしかよく見えない。大切なものは目には見えないんだ。
これは、物語のキーとなるフレーズだ。
星の王子さまミュージアムの展示の説明で、作家のサン=テグジュペリがこのフレーズを書くきっかけとなった原体験があったことを、今回初めて知った。
それは衝撃的な体験だった。
サン=テグジュペリには2歳下の弟がいた。とても仲が良かった。
15歳の弟はリウマチを患っていた。
サン=テグジュペリが弟の枕元に腰かけていたあるとき、弟に発作が起きた。サン=テグジュペリはどうしたら良いかと慌てたが、弟は彼を制し、そして発作が治まったあと、こう言ったという。
Don’t worry. I’m all right. I can’t help it. It’s my body.
引用元:Antoine de Saint-Exupéry from Wikipedia
心配しないで。ぼくは大丈夫。体がしていることだから、自分ではどうすることができないだけなんだ。
精神と肉体とは別物なんだ、と言いたかったのだろう。
その言葉を発したその日のうちに、弟は亡くなった。
弟が亡くなったあと、あらためてこの言葉を解釈してみる。
”悲しまないで。僕はここにいるよ。大切なものは目に見えないんだ。”
15歳にして達観していた弟。
そして、自分もまだ17歳の若さで大切な弟を見送ったたサン=テグジュペリ。
その経験があったからこそ、誰もが心を打つ言葉をこうして残すことができたに違いない。